医療事故・刑事裁判で有罪判決(東京地裁)

本日(7月14日)東京地方裁判所(第810法廷)は、医療事故・刑事裁判で被告人医師に禁固 1年、執行猶予3年(求刑:禁固1年)の有罪判決を言い渡しました。遺族(当会員)の支援にあたりながら裁判を傍聴してきた「医療過誤原告の会」宮脇会長から以下のような声明が寄せられましたので掲載します。

<事故概要>
造影剤誤注射で78歳患者死亡 於・都内公立大規模病院
被告人医師に対する業務上過失致死事故

この度の医療事故で亡くなられた被害者・ご遺族のみなさまに、心からお悔やみ申し上げます。 事故は、2014年4月、都内の公立大規模病院で、腰部脊柱管狭窄症の再発疑いの患者に対し、検査を担当した5年目の医師が、脊髄造影検査には禁忌の注射液を誤投与し、患者が呼吸不全となって死亡した事故でした。今回、裁判を傍聴して、被告人医師の被告人質問を直接聞く事ができました。 被告人医師は事故の事実経過を全面的に認めたうえで遺族に謝罪し、その原因として、
①髄液の造影剤が、血液の造影剤と異なる認識がなかった
②使用する造影剤について、効能等事前に確認しなかった
③造影剤の容器に、髄液造影禁忌と赤字で表示されているのを無視した
など、事故について正直に供述している印象でした。

そもそも医師免許により許可されている業務は、患者の命を直接あずかる危険な行為を伴うものであり、従って、診療に当たっては十分に患者の安全に努める事が前提で、患者は医師に命を預けています。医師になって5年目の被告人医師の供述は、その内容のおそまつさに身震いさせられました。被告人医師は、これまで4年間の研修で、患者の生命・身体を第一に考えることを学ばなかったのでしょうか。 また、研修医療施設は、そのことを教えてこなかったのでしょうか。

病院の当時の指導医は、この事故を教訓に、脊髄造影剤検査についてマニュアルつくり、他職種の立ち合い、事前に薬剤の確認など、病院として安全体制改善に取り組んでいると述べていました。 この度の不幸な事件を機に、医師研修を担っている全国の病院が、医療技術を教育する前に、患者の生命と安全に責任を負っている自覚が育成される医師研修になっているか総点検していただきたい。 また、高度医療の現場でなくても、基本的な安全の見落としが無いか、集団で安全確認システムができているかなど、全病院・診療所等で点検を行い、同様の事故を繰り返さない契機としていただきたい。

2015年7月14日
医療過誤原告の会・会長 宮脇正和