医療事故調査制度検討部会まとめにあたって

医療事故調査制度検討部会まとめにあたって

医療事故調査制度検討部会のが、5月29日に開催された第13回部会で「医療事故の原因究明と再発防止を図り、医療の安全と質の向上を図る」基本的なあり方がまとまり、秋の臨時国会に医療法改定にあわせて制度化が提案されることになりました。

私たち、医療被害者が強く望んでいた、「医療事故から学ぶ」公的な仕組みづくりへ、ようやく「一歩前進」です。 ご尽力いただいた関係者の皆様に、心から敬意を表します。

今回まとめの中で最も大事な点は、「医療事故被害者から事故調査を要請できるようになる」点です。 これまでは、患者家族が突然肉親の死亡に遭遇し、医療事故と疑っても、医療機関が事故と認めないケースが多く、被害者はやむを得ず自ら事故原因を調べるしか術がありませんでした。しかし、医療の専門家ではない被害者家族が、外部から事故原因を調査するのは余りにも困難で、多くの被害者は泣き寝入りでした。 事故原因を明らかに出来て裁判に持ち込めるのは、残念ながら協力者に恵まれたほんの一部の被害者家族だけでした。 このことが、未だに医療事故死の実態を国として把握することが出来ず、的確な対策がとれないまま推移し、同様の被害が繰り返され、国民全体にとって不幸な状況が続いてきた要因だと思います。 そして医療界で働く人々にとっても、医療事故の現状は、働き甲斐や誇りを台無しにする結果にもなりました。

今後、厚労省で医療事故調査に係るガイドラインを策定する実務的な検討が開始されます。

今回のまとめに沿って、医療事故の実態把握と国民が信頼できる調査にしていくには、まだ、いくつかの心配な点があります。

一つ目は、被害の実態把握が抑制される事が危惧される点です。

厚労省から遺族負担のあり方として、被害者からの調査要請に負担金を課す考え方が提案されました。

医療過誤原告の会に寄せられている相談では、患者が突然死亡した場合に、医療機関が事故と認めず、「合併症、医療に危険は伴う、想定されたリスク、原因不明、全力は尽くした等々」説明され、早々に話を打ち切られてしまうケースが少なくありません。 事前にリスクについての話は全くなく、事故が起きてからそのような説明だけで、はたしてどれだけの遺族が納得できるでしょうか。もちろん院内事故調査の説明もありません。

今回ようやく、医療被害者が第三者機関に事故調査の申し出をする道が開かれる事になります。

医療事故の実態を把握することが、再発防止に不可欠で、これまで医療機関が認めていなかったために把握できなかった事故が、被害者からの申し出で全貌把握が可能となります。これは、この制度の根幹にかかわることです。 厚労省の説明では、低所得者に減免措置を講じて必要な申請が妨げられることがないように配慮するとされていますが、検討会で何人かの委員から「患者の申し出に一定の歯止めが必要」、「調査報告書は被害者に利益となるので負担は当然」などの意見がありました。

調査申請の有料化提案は、被害者が低所得者と申し出るためらいや、一家の大黒柱を失った遺族等の申請抑制につながり、被害の実態把握にマイナスとしかなりません。

二つ目は、事故調査の透明性・公平性の確保を図るために、被害者に事故発生時、情報開示の問題です。

医療過誤裁判の多くは、医療側が主張する事故の経過と被害者の体験した事実が大きく異なることによって、被害者が本当の原因を知りたいと年間800件もの裁判提訴となっている事です。

医療過誤裁判の過程でカルテ改ざんや、偽証証言が明らかとなって、医療側敗訴判決や賠償金を払って和解となるケースが半分以上あります。 しかし、裁判終了後、カルテ改ざんや証言の偽証によって、医療者側に刑事罰が科されたケースは皆無なのが現実です。

今回の制度は、まず院内調査から開始され、第三者機関で調査・検証を受ける制度となっています。調査の信頼を確保するには、調査の前に実施された医療行為事実の保全と、その内容を被害者に提供することが不可欠です。 「医療事故の際に真実説明」の方針を実践している社会保険病院グループでは、すでに数年前から事故発生時に被害者に診療録開示を積極的に行い、以後の紛争化防止に成果をあげています。検討会で医療界の重責にある委員の方から、「医療の信頼のために責任を持って自律性を発揮していく覚悟だ」との発言があり、真摯な強い意志を感じました。 事故調査の透明性・公平性が図られてこそ、調査結果が信頼され、ひいては再発防止の実効性につながります。

ガイドライン作成にどのように反映されるか注視していきたいと思います。

三つ目は、調査結果の信頼性確保をはかるため第三者機関の調査員の構成についてです。

検討会では、事故調査は医療関係者に限定すべきだとする発言が多々ありました。

事故の専門性の検証には、医療関係者が主体であることはもちろん理解できますが、私たち医療被害者が外部から医療事故調査を経験してみて強く考えさせられたのは、学会で上下関係、大学の同窓、医師会の仲間、地域連携等で、事故の鑑定結果が歪んだ内容になるケースを多く経験した事です。 また、医師からカルテの改ざんや、証言の偽証を強要された看護師もめずらしくありませんでした。 事故調査には、当事者と利益相反の関係を疑われることがないように医療界以外で事故調査の経験者や、被害者の疑問を的確に反映する被害者代理人弁護士の参加も必要ではないでしょうか。

現在、実施されている産科医療補償制度や、死因究明モデル事業では医師以外の方が調査に関わり、被害者からも信頼されている実績をぜひ活かしてほしいと思います。

医療過誤原告の会は、公的医療事故調査制度の設立を求めて、他の被害者団体と一緒に2008年から毎月駅頭宣伝・署名を実施してきました。たくさんの賛同署名をいただきました。来る6月30日は、50回目を迎えます。医療事故から学ぶ制度の確立を目指して、これからも、運動を継続していきます。

2013年5月30日

医療過誤原告の会

会長 宮脇正和

原告の会・関東集会の報告

原告の会関東例会を下記の通り開催しました。

日時 日(13301630 

場所 全労連会館3F会議室、御茶ノ水駅徒歩5分

内容 原告の会の活動報告、

   医療版事故調・情勢報告、

   被害者の事故報告と闘いの経験交流

   被害者が依頼する弁護士との対応・問題点について

 でした。

 25名の方が参加、医療事故調査制度で、

 制度設計が注目される、院内事故調査委員会について、

 経験者から、改ざんされたカルテを基にした報告書の信頼性について、

 厳しい意見が出されました。

 終了後、御茶ノ水駅付近の居酒屋で、交流しました。

 次回の関東集会は、9月30日を予定しています。

5月・医療版事故調設立推進署名の報告

医療版事故調の設立に向けて、

厚労省の検討会も5月29日で、まとめを予定されている情勢の下、

国民に信頼される制度づくりをめざして、

医療版事故調設立推進署名(第49回)を下記の日程で行いました。

17名の方に参加いただきました。ありがとうございました。

日 時 26日()16時~17時

場 所 JR御茶ノ水駅、御茶ノ水橋改札口付近

  終了後 交流会を実施(参加18名)しました。

次回はいよいよ第50回、6月30日(日)16-17時

  JR原宿駅、神宮橋付近を予定しています。

5月19日原告の会・中部地区集会報告

下記の通り、13名の方の参加で行いました。

日時   5月19日(日)13:00~16:30

場所   名古屋・吹上ホール第4会議室

内容 1、情勢・原告の会活動報告 宮脇会長

昨年12月の総会以降、医療事故相談件数47件、相談内容と課題、

医療事故調査制度設立に向けての取り組みと、現在の状況等を

報告しました。

2、講演 阪本則子氏

「市立四日市病院へ事故後に医療安全を求める活動について」

自分のご家族の医療事故と解決への努力、

市立病院が市民にも開かれた安全・安心の医療を願って、

運動を広げている活動を報告いただきました。

3、医療被害報告、相談と闘いの交流

愛知、福井、三重、大阪、岐阜、静岡等から参加があり、

集会だけでは語り尽くせず、終了後の懇親会まで熱心に交流しました。

原告の会事務局・宮脇記(090-6016-8423)

5月14日・医療事故調査制度早期設立を求める、国会院内集会報告

本日(5月14日)の国会院内集会の報告です。

 

参議院議員会館の1F集会室(100名定員)で開催しました。

永井裕之患医連代表が、昨夜深夜までかかって準備頂いた、

資料100部が足りなくなるほど、医療被害者、弁護士、マスコミ、

国会関係者等の方々が会場いっぱいに詰めかけてくれました。

ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

 

冒頭、永井代表が「第三者医療事故調査制度の早期設立を求める院内集会」の主旨を挨拶、

大熊由紀子(国際医療福祉大学大学院教授)コーディネータの進行で、

自民党福岡議員、日本医師会高杉常任理事、共産党小池政策委員長、みんなの党川田議員、

厚労省大坪医療安全推進室長、日本医療安全調査機構木村事務局長、患医連豊田事務局長

が発言、民主党・社会民主党・みどりの風、生活の党からメッセージをいただきました。

いずれも医療事故調査制度の早期設立に積極的な内容の討論となりました。

特に、厚労省が事故調検討部会のこれまで12回の議論をもとに、

今秋の臨時国会に医療事故調査制度の設立を盛り込んだ、医療法改定の姿勢を、

本日の集会でも明確にしました。

 

従って、調査制度のありかたについて論議が深まり、

①    制度の目的を原因調査と再発防止にする、

②    第三者機関機関と院内調査が、公平・透明性を確保する重要性、

③    財政的にしっかり調査できる予算の確保、

④    医療事故調査は公益的なものであり、被害者に費用負担を求めない、

⑤    早期に調査制度を発足させ、運営しながら内容の見直しを重ねていく

等の意見が出され、

国会議員、被害者、医療界、厚労省それぞれ全体として前進させていく事を確認して終了しました。

 

衆参ともに国会の委員会開会中で、たくさんの議員の参加がむつかしい状況でしたが、

議員秘書の方が、ずいぶん来ていただきました。

 

私達被害者として、今日の院内集会の成功を踏まえて、事故調推進署名をさらに進め、

後日、政府に署名を添えて、意見書を提出していきたいと思います。

引き続き、ご支援よろしくお願い致します。

医療過誤原告の会・事務局 宮脇