医療事故調査制度シンポジウムの報告

医療事故調査制度の検討が重要段階になっていますが、

患医連・事故調フォ-ラム主催で下記シンポジウムを開催しまし、

150名余の参加で、熱心な議論が、今後に生かされるよう願っています。

 

院内事故調を中心とする“真の”医療事故調査体制を確立するために

【日時】 平成25年8月24日(土)13:30 ~16:45  受 付;13:00~

【場所】全労連会館ホール( JR御茶ノ水駅徒歩5分)

【内容】

第1部 各シンポジストからのプレゼン

【コーディネータ】大熊 由紀子氏 (国際医療福祉大学大学院教授)

【シンポジスト】

1)大坪 寛子氏(厚生労働省 医政局医療安全推進室長)

2)木村 壮介氏(日本医療安全調査機構 中央事務局長)

3)長尾 能雅氏(名古屋大学医学部教授)

4)樋口 範雄氏(東京大学法学部教授)

5)鈴木 利廣氏(すずかけ法律事務所 弁護士)

6)宮脇 正和氏(医療過誤原告の会 会長)

7)岩本   裕 氏(NHK 放送文化研究所)

第2部 パネルディスカッション

「院内事故調を中心とする“真の”医療事故調査体制を確立するために」

第1部の報告を受け、会場からの質問も配慮して討議されました。

第2部 シンポジウムでの議論,意見(木下弁護士によるまとめ転載)

●宮脇氏が報告挙げた事例をもとに,院内でどのような対応をするか議論

→長尾氏 そのような事例については,院内事故調をすることを進言する。

院内事故調を実施するか否かの決定は病院長。

自分としては,調査は一本化したい。結果がばらばらになるような事態は避けなければならないと考えている。

第三者機関が調査するというのであれば,院内の調査を保留して,第三者機関の調査結果を待ちたい。

●宮脇氏より,時間がたっても,遺族申請に基づく第三者機関の調査を開始するべき,という意見に対し,次の意見あり。

むしろ始めから第三者機関が調査できるような体制を整えていくことが重要だし,それで対応できる。

病院届け出と遺族申請が考えられるが,第三者機関が遺族申請の場合に,調査の対象にあたるかどうかを判断することが重要。

●(樋口氏)アメリカでは,院内事故調査の結果を裁判の証拠に使えないようになっている。

そのようにすべきだという意見が,日本の事故調創設の議論の中で言われることがある。

しかし,アメリカでは,民事裁判で負けて医療過誤を起こしたことが認められると,

保険料がアップする。多額の保険料支払いのため,医師を続けられなくなる。

また,医療過誤を起こしたことが,データベースに登録され,医師・医療機関であればデータベースを見ることができ,

医療過誤を起こした医師は雇われなくなる。

そのため,アメリカの医師は医療過誤と扱われることを恐れている。

そのようなアメリカと,そういう状況がない日本と同列に扱うべきという議論はおかしい。

●第三者機関がきちんとした調査をすれば,

本来しなくて良い裁判まで行かなくて済む。このような効果が副次的に予想される。

モデル事業を経験したものでも,訴訟まで行くのは,少数である。

●カルテ改ざんなどに罰則を設けることを盛り込むべきでは,

という質問・意見に対して,

(大坪氏)レアケースを前提に話していると,制度ができない。

懲罰の対象になる人を前提とした制度を作ることは考えていない。

●(長尾氏)院内事故調査を行うときに,

診療記録とは別に,事実経過の報告書を関係者各人に書かせる。それを基に後で記憶のすりあわせを行う。

●(大坪氏)院内事故調査に関するガイドラインを今後作るが,

モデル事業に関わってきた方々によって作ってもらう予定。

●現在,外部委員を院内調査などに入れることを求められているが,

大学病院などの臨床研究では,倫理委員会に外部者(法律家など)を入れている。

したがって,事故調査の場面でも,第三者を入れる土壌はできている。

以 上

【主催】 患者の視点で医療安全を考える連絡協議会  医療版事故調推進フォーラム