27日夜9時、NHKニュースウオッチ9、大越キャスターの番組で、
医療被害者にとって、見過ごすことが出来ない内容の報道がありました。
今年1月、埼玉県北部で「呼吸が苦しい」と訴えた患者が、
救急受入れ先に36回断られ、亡くなられた事件がありました。
当時は、「病院の受け入れ拒否」と報道されたため、病院関係者から抗議があり、
続報第2弾として、「拒否」ではなく「受け入れ不能」だと、
抗議があったと事を紹介して訂正しました。
27日夜NHKニュースウオッチ9は第3弾だとして、受け入れを拒否した一つの病院を取材、
内容は、当直医が整形外科医と小児外科医の2名で、
内科の重症救急患者は診る自信がなく断ったとのことでした。
ところが、医師のインタビュー「結果が悪いと即、訴訟になるから」を放送し、
医療訴訟があるから救急医療が委縮していると、印象づける方向にすり替わりました。
受け入れを断った原因が、整形・小児の外科医の当直者しかいないために、断ったのであれば、
埼玉県北部の夜間が、急性期内科患者を診る救急医師体制が弱いところを課題とすべきなのに、
医療訴訟があるから救急受入れを断ったかのような報道は、
娘を亡くし医療訴訟を体験した者としてとても傷つきました。
現在、医療過誤裁判で苦労している多くの医療事故被害者にとっても、
とうてい見過ごすわけにはいかない報道内容です。
また、NHKニュースウオッチ9報道の視点では、埼玉県北部の救急医療体制の本質的な改善にはつながりません。
報道内容に強く抗議し、医療訴訟の厳しい実情を伝える電話をNHK(0570-066066)に行いました。
電話窓口は、こちらの話を録音して担当に伝えると話しました。
ところが、このニュース番組のエンディングで「医療訴訟が救急医療の委縮に」と、
またまた強調する報道が流れ、怒りがふつふつと沸いています。
医療過誤原告の会 事務局 宮脇
行政に働きかけて
>急性期内科患者を診る救急医師体制
を構築させたいんでしょうけど、
うまくいかない理由のひとつは、医者自身が
>「結果が悪いと即、訴訟になるから」
と思ってるからなんですけど。
医療訴訟は何故起きるのか、それは、手術した結果生じた患者の死や重度の後遺症等の事象について、術後に一部の医師が患者側に、その原因を包み隠さずすべて正直に話さず、さらに謝罪もせず、再発防止対策も講じようとしないからです。医師がこれらの対応を誠実し、再発防止策等を医療界で共有にすれば、医療訴訟は激減するとともに、医療の質も飛躍的に向上すると考えます。
私も、頚椎の手術直後から重度の後遺障害が生じてしまい、手術した当該病院に1年4か月近くリハビリ入院を余儀なくされましたが、術後9年以上も過ぎた現在でも四肢の不全麻痺、右半身のしびれ、頸部・背中・両上肢のひどい痛み等により、妻の介護なしには日常生活を送れません。リハビリ入院中に、主治医になんども原因等について説明を求めましたが、術後に生じた後遺障害について理にかなった納得のいく説明はなく、やむなく訴訟に踏み切りました。
提訴してから4年以上立ちますが、医師から入院中に説明がなかった事実(手術記録の改竄・原本の破棄、カルテの改竄、術中の手術部位の椎弓の骨折等)が次々に明らかになりました。このようなことを平気でするごく僅かな医師がいる限り医療訴訟はなくなることはありません。医療界はこれらの事実を認識し、医療の質の向上を目指すことこそが、医療訴訟の低減に繋がる最善の策だと考えます。
医療訴訟が救急医療を委縮させるているのではなく、医療訴訟をなくすような努力を医療界が怠っていることこそが、救急医療の委縮に繋がっているのです。
救急医療を萎縮させているのは、救急医療という分野でのおかしな医療訴訟が原因なので、すべての医療訴訟が原因ということではありません。
休日時間外などの救急医療は、医師の善意の自己犠牲の上でしか成立しないのに、偶然専門外の疾患であっても、過剰な責任を追求するような、加古川の裁判などが、救急医療への関与を忌避させる原因となっているのです。
自分の担当医の問題を、医師や医療全体への怒りに替えるのは、日々誠実に医療行為を行なっている医師看護師のやる気をそぐのに十分なものでもありましょう。
医療訴訟をなくすような努力を医療界が
誤 怠っている → 正 真摯に行っている
ことこそが、救急医療の委縮に繋がっているのです。